都市洪水モデルを支援するための低コストドローンマッピングと簡易参加型GIS(英語文献紹介)

概要

この研究は、低コストのドローンマッピングと参加型GISを組み合わせて都市部の洪水モデルを支援することを目的としています。洪水モデルや予測には、詳細な土地被覆や標高データが必要ですが、これらのデータを取得するのは通常コストがかかるため、低コストで実現するための方法が求められています。本研究では、ドローンを用いた詳細な土地被覆と標高データの生成に加え、地域住民から洪水被害の歴史的情報を収集し、それを組み合わせることで洪水のリスク領域を特定し、洪水モデルを作成しました。

 

背景

都市部の洪水は人々や経済に多大な影響を与える可能性があり、特に気候変動の影響やパンデミックといった状況では、影響がさらに深刻化します。洪水のリスクを軽減し、被害を最小限に抑えるためには、災害管理や避難計画が重要となります。これには、洪水発生前に危険区域の特定や浸水範囲の予測が必要です。しかし、詳細な地形データの取得はコストがかかるため、低コストで実現できる手法が求められていました。

 

GISとリモートセンシング技術の進展により、洪水危険区域の特定や予測が進化してきましたが、従来の航空写真撮影には高額な費用が伴い、特に詳細な地形データを取得するのが困難でした。最近では、小型の無人航空機(ドローン)を用いることで、より低コストで詳細な地形データを取得できるようになり、都市部の洪水モデルに利用することが可能になっています。

 

目的

この研究の主な目的は、ドローン技術を用いて都市部での低コストかつ詳細な地形データを取得し、さらに地域住民から得られる洪水の歴史的な情報をGISに組み込むことで、洪水モデルを作成することです。これにより、都市部の洪水リスクをより正確に評価し、災害管理や避難計画の策定に活用することを目指しています。

研究対象地域

 

手法

本研究は、2つの主要なステップで構成されています。まず、ドローンを用いて詳細な土地被覆データを取得することです。ドローンを使用して、対象地域の高解像度のオルソフォトやデジタル標高モデル(DEM)を生成し、それらを基に土地の被覆状態や洪水のリスクが高いエリアを特定しました。ドローンとしてはPhantom Pro 4 Obsidianを使用し、飛行高度や飛行パラメータを設定して撮影を行いました。撮影後、Agisoft Photoscan Proを用いて写真を整列し、点群データを生成し、最終的にオルソフォトとDEMを作成しました。

 

次に、参加型GISを通じて地域住民から過去の洪水被害に関する情報を収集しました。特に、過去の洪水で浸水した範囲や水深に関する情報を住民に聞き取り、GIS上でデータとして反映しました。この情報を基に、洪水がどのエリアでどの程度発生したかを地図上に表示しました。

回答者の分布

 

結果

ドローンマッピングによって取得されたデータは、非常に高精度であり、都市部の詳細な地形データを低コストで取得することができました。また、参加型GISを通じて地域住民から収集した洪水の歴史的データは、洪水リスクの特定に有効であることが確認されました。

 

本研究では、特にSumber村の東部が洪水のリスクが高いエリアであることが判明しました。このエリアでは、2015年に発生した洪水で1.7メートルの浸水が確認されており、最も浸水が深かったのはSumber村のRT 1-3の地域でした。この地域は、Pepe川とGajah Putih川の間に位置し、地形的にも洪水が発生しやすい場所でした。

ブロック8の北部におけるDSM(デジタル標高モデル)とオルソフォト

 

洪水浸水範囲

 

考察

ドローンを用いた低コストの地形データ取得と、参加型GISを組み合わせた手法は、洪水リスクの評価において非常に有効であることが確認されました。特に、ドローンを用いることで、高額な費用をかけずに詳細なデータを短時間で取得できるため、都市部における洪水リスクの評価や災害管理の計画において重要な役割を果たすと考えられます。

 

また、地域住民からの参加型データ収集は、特に洪水の履歴に関する情報が不足している地域で有効です。住民が持つ知識を活用することで、洪水リスクの特定がより正確に行われ、災害対策の策定にもつながります。

 

結論

本研究では、低コストのドローンマッピングと参加型GISを組み合わせた手法が、都市部での洪水リスク評価において非常に有効であることが示されました。特に、詳細な地形データを短期間で取得し、住民からの洪水履歴データを組み合わせることで、洪水リスクの特定がより正確に行えました。この手法は、今後の洪水リスクの評価や災害管理、避難計画の策定において重要な役割を果たすと考えられます。さらに、地域住民との協力を強化し、洪水対策を実施することが求められます。

 

今後は、この技術をより広範な地域で適用し、他の災害リスク評価にも活用できる可能性があります。

 

出典元

https://technicalgeography.org/pdf/2_2022/04_saputra.pdf

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