概要
この論文では、オオタカ(Accipiter gentilis)の生息適地予測に関する研究を行い、広域スケールでの予測の有効性や空間的汎用性、地域性の課題を探ることを目的としています。特に、日本全国や関東、東北地方におけるオオタカの営巣適地を、生息適地モデル(SDM)を用いて予測し、地域ごとの環境要因の違いがどのように影響するかを評価しています。
背景
オオタカは、地域の環境の健康を示す象徴的な希少種であり、その保護が重要です。しかし、全国的にオオタカの生息状況や営巣地の分布は詳細には把握されておらず、調査には限界があります。このため、生息適地モデルを使って、限られたデータから広範囲にわたる生息適地の予測が必要とされています。
目的
本研究の目的は、オオタカの営巣適地を予測することにより、広域スケールでの生息環境の評価を行い、地域ごとの予測モデルの有効性や空間的汎用性を明らかにすることです。また、予測結果を活用することで、オオタカの保護と保全に寄与することを目指しています。
手法
データ収集
日本全国および関東・東北地方におけるオオタカの営巣位置データを収集し、GISデータ(植生、土地利用など)と統合しました。
予測モデル
最大エントロピー法(MaxEnt)を用いて、生息適地モデルを構築し、営巣適地を予測しました。また、20×20kmおよび1×1kmのメッシュサイズで環境要因の寄与率を解析しました。
解析
ジャックナイフ法を用いて、各環境要因の寄与率を推定し、ROC曲線からモデルの精度を評価しました。
結果
全国スケールでの予測
市街地面積が最も重要な環境要因であり、オオタカの営巣適地は主に関東、東日本に集中していることがわかりました。
地域スケールでの予測
関東では樹林面積が最も高い寄与率を示し、東北では水田面積が重要な要因となりました。地域ごとに重要な環境要因が異なることが確認されました。
各説明変数の応答変数に対する寄与率
全国スケールでのオオタカの営巣適地の予測結果
結論
本研究は、オオタカの営巣適地予測が広域的な保全計画に活用できる可能性を示しました。しかし、予測モデルの空間的汎用性には限界があり、地域ごとに異なる予測結果を慎重に評価する必要があることが指摘されました。また、予測の精度を高めるためには、さらに多くのデータ収集と検証が必要です。
出典元
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila/78/5/78_647/_pdf/-char/ja