積雪深計測におけるRTK-UAVの有効性(論文紹介)

概要

この研究では、RTK-GNSS(リアルタイムキネマティックグローバル衛星測位システム)を搭載した消費者向け無人航空機(UAV)を使用して、積雪前後の地形データを撮影し、3次元モデルを作成しました。地上基準点を使わず、複数の積雪期間におけるデジタル表層モデル(DSM)の差分から積雪深を推定し、その精度を地上での実測値と比較しました。

結果として、推定された積雪深は実際の値よりも小さくなる傾向がありましたが、実測積雪深と推定積雪深は一次関数の式で表すことができ、両者には強い相関関係が見られました(r=0.98)。適切な変換式を用いることで、正確な積雪深分布を推定できることが示されました。

 

背景

積雪深の分布を知ることは、水資源管理や防災において重要であり、特に冬季の列車運行やインフラの維持管理に関連しています。従来の方法(測深棒、航空レーザ計測など)には、空間解像度の低さや高コストなどの課題がありました。

そのため、無人航空機を用いたより高精度で省力化された積雪深の計測手法が注目されてきました。

 

目的

本研究の目的は、RTK-UAVを用いて地上基準点を使用せずに積雪深を高精度で推定し、その正確性と利便性を検証することです。

また、従来の積雪深計測手法と比較して、RTK-UAVの優位性を明らかにすることも目指しています。

 

手法

調査地は北海道の牧草地で、平坦な地形が広がるエリアでした。調査は積雪前と積雪後にわたって4回行われ、Phantom 4 RTKを使用して空撮を行いました。撮影した画像を用いて、構造解析(SfM)と多視点ステレオ処理により3次元モデルを作成し、積雪前後のデジタル表層モデルの差分から積雪深を推定しました。

また、地上で測深棒を使って実測した積雪深と比較しました。

 

結果

RTK-UAVによる推定積雪深は、実測値より小さくなる傾向がありましたが、全体的には強い相関関係が確認されました。推定精度は誤差約10cmでしたが、適切な変換式を用いることで、精度を向上させることが可能です。

RTK-UAVによる積雪深計測は、空間解像度やデータの正確性、時間解像度において優れていることが示されました。

 

結論

RTK-UAVを使用することで、地上基準点を設置せずに高精度な積雪深の推定が可能となり、計測の省力化が実現できました。

従来の手法と比較しても、空間解像度やデータの正確性に優れ、特に高頻度での計測が必要な場合に有効です。

 

論文の出典元

http://topography.csis.u-tokyo.ac.jp/resources/pdf/Obanawa_etal_2020_TJGU.pdf

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