VR技術とドローンを用いた空き家調査の効率化(論文紹介)

背景:

 近年、日本では空き家の増加が社会問題となっております。2018年時点で、空き家数の約846万戸、空き家率は3.6%に達しています。一貫して増加が続いておりますが、この状況は倒壊や防犯率低下、景観への影響など様々な問題を引き起こしています。

そうした状況で、現在、非効率な調査方法が実態把握の壁となっております。空き家の空間的分布を把握する手法は、1棟ずつ個別に訪問し、外観を見て判断する個別目視(現地調査)が中心となっております。そのため、広域の空き家分布状況を把握するためには多大な労力と時間、費用を要しております。

現地調査に行く労力や時間を軽減させるために、VR空間に実環境を構築した状態で空き家調査を行う場を提供できれば、現地調査を迅速化・精微化することが期待できます。

この研究では、予備的な実験を行い、VR空間での空き家調査を実施し、これにかかる時間や精度を明らかにすることを目的とします。

 

手法

①3D作成(ドローン空撮とSfM)

 研究対象地域に分布する住宅地のフル3Dモデルを作成するために、日中に飛行を実施しました。対象地域全体を対象に簡単なグリッド飛行を行い、直下及び斜め撮り撮影にて家屋の壁面などの情報を含んだ空中写真を複数取得しました。複数の写真からその撮影位置と対象物の復元を行うSfM手法を使用し、住宅地のフル3Dモデルを作成しました。

住宅街の3Dモデル

 

②空き家調査システム

 VR空間内にて空き家か非空き家かをユーザーが識別し、それを判定するためのギミックを組み込みました。判定予定の家屋に対して、ユーザーが空き家か非空き家かの判定を行い、頭上にある球状のオブジェクトをトリガーすることにより、判定結果を空き家(赤)か非空き家(青)を設定できます。家屋を目視確認し、すべての球体を設定したうえで調査結果ボタンを押すことで、推定した結果と実際の分布との比較を出力します。日常的なVRユーザーや非VRユーザー12名を対象に、VR空き家調査を実施しました。 空き家関連の研究・調査経験のある被験者2名(うち2名はVR初体験)、経験がない被験者は10名(うち1名はVR初体験)でした。

空き家システムのイメージ

 

結果

 VR空間での調査により、調査時間は従来の約85%削減されました。12名の被験者による調査の結果、非空き家の判定精度は96.4%と高かったものの、空き家の再現率(実際の非空き家のうち、どれくらい空き家を推定できたか)は21.5%にとどまりました。特に空き家の判定が困難であることが示されましたが、非空き家を高精度に判定することで、空き家候補の絞り込みが可能であることがわかりました​。

 

参考文献

総務省統計局, 平成30 年住宅・土地統計調査.https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/tyousake.html(参照 2023-10-24).

Iizuka, K., Ogura, T., Akiyama, Y., Yamauchi, H., Hashimoto, T., Yamada, Y. “Improving the 3D Model Accuracy with a Post-Processing Kinematic (PPK) method for UAS surveys,” Geocarto International, 2022, 37:14, 4234-4254.

 

論文のURL

https://www.jstage.jst.go.jp/article/vconf/2023/0/2023_102/_pdf/-char/ja

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