東日本大震災の津波被害における神社の祭神とその空間的配置に関する研究(文献紹介)

概要

この研究は、東日本大震災を契機として、地域の神社の配置とその祭神が災害リスク・マネジメントに果たす役割について検討しています。特に、スサノオノミコトや熊野神社に関連する神社の多くが津波被害を免れた点に着目し、神社の空間的配置が自然災害との関連で重要な知見を提供することを明らかにしました。

 

背景

日本は長い歴史の中で多くの自然災害に見舞われてきました。特に津波や地震などは、過去においても大きな被害をもたらし、地域の生活に深い影響を与えています。古来、日本人は地域の地形や自然災害に対処するため、神社を高台に配置するなどの工夫を行ってきました。このような背景から、現代のリスク・マネジメントにおいても、地域の歴史的な災害対応策を再評価する必要性が高まっています。

 

目的

この研究の目的は、東日本大震災時の津波被害と神社の空間的配置との関係を明らかにすることです。特に、スサノオノミコトや熊野神社などの祭神が地域の災害対策においてどのような役割を果たしているかを調査し、リスク・マネジメントの視点から考察を行います。

 

手法

本研究では、津波被害を受けた地域における神社の配置とその被災状況を調査しました。調査対象地域として、津波被害の甚大だった宮城県沿岸部を選定し、津波浸水域と神社の位置を地図上で把握した上で、重点的に現地調査を行いました。さらに、スサノオノミコトを祀る神社や熊野神社が津波被害を免れたかどうかを調べ、その背景にある歴史的・文化的な要因について分析しました。

調査対象地の一部

 

結果

調査の結果、スサノオノミコトを祀る神社や熊野神社の多くが津波被害を免れていることが明らかになりました。これらの神社は、地域の治水上の要所や高台に位置していることが多く、自然災害から守られてきたと考えられます。一方で、津波被害を受けた神社も存在し、それらは平地や沿岸部に位置しているケースが多いことが確認されました。

被害を免れた八坂神社からの眺め

 

考察

スサノオノミコトを祀る神社が津波被害を免れた理由として、神社の配置が地形や地域の治水に基づいて行われていた可能性が考えられます。古来の人々は、津波や洪水の被害を避けるために高台に神社を配置し、地域の安全を守る役割を担っていたと推測されます。また、スサノオノミコトの祭神としての性質が、無病息災や災害の抑制と関連付けられている点も注目すべきです。

 

結論

本研究は、地域の神社の配置と災害リスク・マネジメントとの関係性を明らかにしました。特に、スサノオノミコトを祀る神社が津波被害を免れている事例は、地域の歴史や文化が災害対策にどのように反映されているかを示す重要な知見です。今後のリスク・マネジメントにおいて、地域の「空間の履歴」を踏まえた災害対策が求められることが示唆されます。

 

出典元

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejsp/68/2/68_I_167/_pdf/-char/ja

 

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