環境調査でのドローン応用に関する検討(文献紹介)

概要

この論文は、環境アセスメントにおけるドローン技術の応用について検討したものです。環境アセスメントにおいては、従来のリモートセンシング技術や有人航空機による空中写真測量が主流でしたが、近年、ドローンの技術が進展し、低コストかつ高精度な調査が可能となりました。本論文では、環境調査でドローンを使用することの利点や、実際の応用例について具体的に示し、ドローンを用いた新たな調査手法や技術の可能性について論じています。

 

背景

環境アセスメントは、大規模なインフラ開発や工事が自然環境に及ぼす影響を事前に評価し、環境保全措置を講じるために必要不可欠なプロセスです。従来の環境アセスメント調査では、地形や水質、生態系に対する影響を把握するために、リモートセンシング技術や有人航空機を使用してきました。しかし、これらの手法はコストが高く、また調査の自由度が低いという課題がありました。ここで、ドローンを用いた新たな調査技術が注目されています。ドローンは小型であるため、調査対象物に対する影響を最小限に抑えつつ、詳細なデータを短期間で取得できるという利点があります。

 

目的

本論文の目的は、環境アセスメントにおけるドローン技術の応用事例を紹介し、その利点や課題を明確にすることです。また、ドローンを活用することでどのように調査が効率化され、従来の手法と比較してどのような新しい可能性があるのかを検討します。特に、従来の技術では困難であった領域や手法に対して、ドローンがどのように貢献できるかについて具体的な応用例をもとに論じています。

 

手法

この研究では、ドローンを用いた環境アセスメント調査の実例を紹介し、可視画像や赤外画像を活用した調査手法について詳述しています。具体的な調査手法は以下の通りです。

 

可視画像の応用

ドローンを用いて取得した可視画像を基に、地形の詳細な把握や河川の濁水調査、生物生態系の調査を行いました。特に、絶滅危惧種のウミガメの産卵巣や、リュウキュウイノシシの行動調査にドローンを活用した事例を紹介しています。これらの調査では、ドローンの高解像度画像により、従来の手法では確認できなかった詳細な情報を取得しました。

サンゴ礁性海岸でのリュウキュウイノシシの獣道とウミガメの産卵巣の様子

 

赤外画像の応用

赤外カメラを搭載したドローンを使用し、熱水の調査や地熱エリアの調査を行いました。赤外画像は、可視光では判別できない温度差を捉えることができるため、地下水の湧出や熱水の流出状況を把握するのに役立ちました。

ドローンによる地熱と熱水の調査

 

三次元モデリング

ドローンで撮影した画像をもとに、産卵海浜や藻場の三次元モデリングを行いました。これにより、地形や環境の変化を立体的に把握し、より詳細な環境評価を行うことが可能となりました。

ウミガメの上陸産卵調査を行った海岸の段彩図

 

結果

ドローンを活用した環境アセスメント調査では、従来の技術と比較して以下の利点が確認されました。

 

コストの削減

ドローンは、有人航空機に比べて運用コストが低く、また調査地域や時間の自由度が高いため、効率的な調査が可能となりました。

 

高精度なデータ取得

ドローンによる空中写真や三次元モデリングにより、従来では難しかった詳細な地形や生物の行動パターンを把握することができました。特に、リュウキュウイノシシの行動調査やウミガメの産卵巣の調査では、ドローンがその高解像度画像を活用することで、正確なデータを得ることができました。

 

危険性の低減

従来、有人ヘリコプターを使用していた調査では、操縦者や研究者にリスクが伴っていましたが、ドローンの導入により、危険を回避しながら調査を行うことができました。例えば、火山活動による河川への濁水の流出状況を調査する際、ドローンを使うことで高リスクなエリアにも近づくことができ、安全かつ効果的にデータを取得することができました。

 

考察

ドローンを環境アセスメントに応用することで、調査の効率性やデータの精度が向上する一方で、いくつかの課題も指摘されています。特に、ドローンのバッテリー寿命が限られているため、長時間の連続調査が難しいという点や、天候条件に大きく影響される点が課題として挙げられました。また、ドローンの操縦には技術的な知識が必要であり、適切な訓練が欠かせないという点も指摘されています。

 

結論

本論文では、環境アセスメント分野におけるドローンの応用可能性について検討しました。ドローン技術は、調査の省力化やコスト削減、高精度なデータ取得に大きく貢献する一方で、操縦技術やバッテリー寿命といった課題も残されています。今後、ドローンを用いた環境調査技術のさらなる発展とともに、調査の効率化や精度向上が期待されます。また、現地での踏査とドローンによるデータ収集を組み合わせることで、より包括的な環境評価が可能となるでしょう。

 

出典元

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsia/18/2/18_14/_pdf/-char/ja

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