論文概要
この論文は、スリランカのAranayake地域を対象に、ドローン画像とGIS技術を用いて地滑りの分析および予測を行ったケーススタディです。地滑りは、地域住民の生命、農業活動、経済活動、交通機関などに大きな影響を与える自然災害であり、その予測と管理が重要視されています。本研究では、地形データを収集し、GISモデルを構築し、ドローン画像と衛星画像の処理を通じて、地滑り発生の可能性があるエリアを特定する方法が提案されています。また、土地利用データを活用して、地滑りの危険度を評価する方法も取り入れられています。
背景
スリランカ中央高地では、主にモンスーン期に地滑りが頻発しており、これが同国にとって主要な自然災害の一つとなっています。スリランカの総人口の42%が、地滑りの影響を受けやすい10の行政区に居住しているとされています。これまでの研究では、地質学的および地形的な要因をGIS環境で分析し、地滑りの予測を行ってきました。また、地滑りを引き起こす要因として、地質、排水、地表の被覆、斜面角度、土地利用などが挙げられており、これらはスリランカの国家建築研究機関(NBRO)によって特定されています。本研究は、これらの要因の中でも特に土地利用と水文・排水が地滑りに与える影響が大きいことに焦点を当てています。
調査対象地
目的
本研究の目的は、Aranayake地域における地滑りの発生リスクを評価し、GIS技術とドローン画像を使用して地滑りの予測と危険度の評価を行うことです。また、土地利用の違いが地滑りの危険度にどのような影響を与えるかを分析し、地域社会の防災対策に役立つ情報を提供することも目指しています。
手法
本研究では、以下の手順で地滑りのリスク評価を行いました。
データ収集
ドローン画像を主要なデータソースとして使用し、地形データを収集しました。従来の衛星画像が利用できないため、ドローン画像を手動でデジタイズし、土地利用パターンを抽出しました。
土地利用図
GISモデルの構築
GISソフトウェアを使用して、地滑りの発生リスクを示す地図を作成しました。この地図は、地形、排水、表土、斜面角度、土地利用などの要因を考慮したものです。
土地利用データの分類
土地利用データを基に、低リスク、中リスク、高リスクの3つのカテゴリに分類しました。これにより、土地利用の違いが地滑りにどのように影響するかを分析しました。
土地利用データごとのリスク
結果
研究の結果、Aranayake地域の土地利用パターンが地滑りのリスクに大きな影響を与えることが確認されました。特に、管理が行き届いていない茶畑や水辺の地域は、地滑りのリスクが高いとされました。また、NBROによって定められた地滑り発生の原因となる要因(地質、排水、斜面の角度など)との関連をGIS分析によって明らかにしました。土地利用ごとのリスク評価に基づき、地滑り危険度地図が作成され、これにより今後の災害リスク管理において重要なデータが提供されました。
考察
地滑り予測には、複数の要因が複雑に絡み合っており、特に土地利用と水文条件の変化が大きく影響していることがわかりました。また、住民の意識調査では、豪雨時の避難行動が不十分であることが判明しました。これは、適切な避難計画の欠如や、公式の警告が住民に十分に伝わらなかったことによるものであり、今後の防災対策において改善が必要とされます。また、研究で使用したドローン画像は精度が高かったものの、衛星画像が利用可能であれば、さらに精度の高い予測が可能であったとされています。
結論
本研究は、ドローン画像とGIS技術を組み合わせることで、地滑りリスクの評価と予測を行う有効な方法を提示しています。この手法は、他の地域や国にも応用可能であり、特に地滑りが頻発する地域において防災対策として有用です。また、今後はより高精度な衛星画像を使用することで、さらに精度の高い地滑り予測が可能になると期待されています。本研究の結果は、地域社会の防災計画や災害リスク管理に貢献するものと考えられます。
出典元
https://cloudjl.com/index.php/RemoteSensing/article/view/18/19