- はじめに
「モニタリングサイト1000 ガンカモ類調査」は、2003年から開始された生物多様性国家戦略に基づく調査プロジェクトで、ガンカモ類を対象に生態系の状態を把握することを目的としています。従来の調査方法は、湖岸からの目視観察が主流でしたが、飛来数が多い場合や地形の影響で見えづらい場所でのカウントが困難なため、ドローンが導入されました。ドローンは、上空からの写真撮影を通じて、より正確に個体数を把握する手段として試行され、調査の労力を大幅に削減しました。
- ドローンの基本情報
2-1. ドローンとは
ドローンはリモートコントロールで操作される無人航空機で、電気モーターで動く「マルチローター型」が主流です。ガンカモ類調査では、一般的な消費者向けの小型ドローンを使用し、空撮によって個体数をカウントします。使用するドローンには高性能なカメラや静音性が求められ、特に高度20m以上での撮影が推奨されます。
2-2. ガンカモ類調査に必要なドローンの性能
調査には高解像度カメラが必要です。特に、似たような羽色を持つカモのメスを識別するには、遠距離からでも鮮明に撮影できる機種が適しています。また、調査対象であるガンカモ類への影響を最小限に抑えるため、飛行時の音が小さい機種が望まれます。
- ドローンの飛行可能地域と飛行方法
ドローンを飛行させる際には、航空法や各自治体の条例などを遵守する必要があります。特に、人口集中地域や空港周辺、国の重要施設付近では、特別な許可が必要です。また、自然保護区や私有地での飛行についても、事前に管理者に確認を取ることが求められます。
- ガンカモ類調査におけるドローンの使用方法
4-1. 基本的な撮影方法
撮影方法には主に4つのタイプがあります。
- 斜め下方からの撮影
広範囲を撮影できるが、個体の大きさや識別が難しいため、総数をカウントする場合に適しています。 - 高高度からの真下撮影
全体を1枚で撮影でき、個体の羽色やサイズが識別しやすいですが、広範囲をカバーするには不向きです。 - 自動操縦で真下から撮影
指定範囲を網羅的に撮影できるため、種別カウントに効果的です。 - 手動操縦で真下から撮影
操作が難しいものの、群の全体を把握でき、精度の高い調査が可能です。
4-2. 撮影事例
特にハクチョウ類やマガモ、カモ類については、個体の大きさや羽色の違いで識別可能です。高度50m前後で撮影する場合、種や個体の識別に有効です。
- 撮影したガンカモ類のカウント方法
ドローンで撮影した写真から個体をカウントするには、重複部分を削除し、ソフトウェアを用いて接合する必要があります。写真接合には、地形を目安にする方法や、Exifデータを用いてGISソフトで位置情報を統合する方法があります。また、カウントには目視でのカウントと自動カウントがあり、フリーソフト「ImageJ」やウェブサービス「Goose123」を活用することも可能です。
- ガンカモ類への影響を抑えるための配慮
ガンカモ類への影響を軽減するためには、飛行高度や飛行頻度に注意が必要です。特にプロペラ音がガンカモ類にとってストレスとなるため、飛行場所や高度を慎重に選ぶ必要があります。また、群れの上空を繰り返し飛行しないことや、離陸地点を群れから遠ざけるなどの配慮も重要です。
- 環境変化の把握
ドローンはガンカモ類の生息地だけでなく、環境変化を把握するためにも有効です。例えば、北海道のペンケ沼では、ドローンを用いて土砂の流入や水位の変化が記録されています。
- 安全な空撮のための注意点
8-1. 保険の加入
空撮には万が一の事故に備えて、保険の加入が推奨されます。責任賠償保険や機体保険を用意しておくと安心です。
8-2. 関係者への連絡
撮影の前には、地域の関係者や管理者に撮影の目的や日程を伝えておくことが重要です。
8-3. 撮影時の対応
操縦中に話しかけられることもあるため、複数名で調査を行い、操縦者以外が対応できる体制を整えておきましょう。
- まとめ
ドローンを使用したガンカモ類調査は、広範囲を効率的にカバーし、個体数を正確に把握するために非常に有効です。しかし、ドローンの影響を最小限に抑え、適切な機器と方法を選択することが成功の鍵となります。
出典
https://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/waterfowl_drone.pdf