ドローン空撮映像を用いた防災プログラムの開発(文献紹介)

概要

本研究は、南海トラフ巨大地震と津波被害を対象とした大学生向けの防災教育プログラムの開発を目的としています。このプログラムは、ドローンによる空撮映像を利用し、三次元的な視点で津波被害をイメージしやすくすることを目指しています。ドローン映像とハザードマップを重ね合わせることで、リアルな津波のシミュレーションを実現し、学生たちに避難場所や避難方法を直感的に理解させる仕組みが整えられています。

 

背景

日本は地震大国であり、特に南海トラフ巨大地震のリスクが高まっているとされています。文部科学省も災害教育の重要性を訴え、防災教育が学校教育に取り入れられていますが、大学レベルでの防災教育はまだ少ない状況です。また、近年ドローン技術が防災において注目され、災害現場の把握に利用されていますが、防災教育教材としての利用はあまり進んでいません。本研究は、これらの課題を解決するために、ドローン映像を活用した大学生向けの防災教育プログラムを開発しました。

 

目的

本研究の目的は、ドローンで撮影した津波被害想定地域の映像を教材として利用し、大学生が津波の脅威を具体的にイメージし、適切な避難方法や防災対応策を考えるための能力と態度を身につけることです。このプログラムを通じて、学生たちが災害をリアルに感じ取り、危機感を持つことで、自らの防災意識を高めることが期待されています。

 

手法

プログラムの中心には、ドローンによる空撮映像とデジタルハザードマップの統合があります。具体的には、南海トラフ巨大地震が発生した際の津波浸水想定域を対象とした空撮映像を用いて、被害のシミュレーションを行います。この映像は高知県高知市と静岡県浜松市の太平洋沿岸部で撮影されたもので、ドローンによる鳥瞰的な視点から津波の来襲をリアルにイメージさせます。学生たちは、これに基づき避難場所の確認や避難方法を検討するグループワークを行います。

 

 

結果

2つの大学で行われた試行プログラムの結果、学生たちはドローン映像を通じて津波被害を立体的に理解し、避難場所や地域の課題について深く考察することができました。特に、津波の到達時間や浸水範囲を具体的にイメージできたことで、リアルな危機感を持つことができました。また、ドローン映像とハザードマップを重ねることで、避難経路の問題や避難所の安全性についても具体的な議論が行われました。

 

考察

本プログラムでは、ドローン映像を使うことで、通常の教材では得られないリアルな災害シミュレーションを提供できました。学生たちは映像を見ながら地域の地形や建物の配置を立体的に把握し、津波による被害を具体的にイメージすることができました。さらに、ハザードマップと組み合わせることで、津波の影響範囲をより正確に理解し、適切な避難場所や避難方法を検討することが可能になりました。

一方で、課題もいくつか浮かび上がりました。プログラムは問題点や課題を考えるまでに留まり、解決策の検討までは進められていません。また、プログラムの効果をどのように評価するかについても、今後の課題となっています。

 

結論

本研究を通じて、ドローン映像を用いた防災教育プログラムが、大学生に対して効果的な防災教育手段となることが示されました。ドローン映像とハザードマップを組み合わせた立体的なシミュレーションは、津波被害のリアリティを増し、学生たちに防災意識を高めるための有効なツールとして機能しました。今後は、より実践的な解決策を含むプログラムの拡充と、評価方法の確立が求められます。

 

出典元

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rjde/3/1/3_87/_pdf/-char/ja

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